研究概要 |
本研究では,河成扇状地も沖積扇状地であるとする際に議論となる巨大扇状地の位置づけを明確にして,湿潤地域の河成扇状地も沖積扇状地であることを世界の扇状地研究者に再認識させることを目的としている。具体的には,湿潤地域の河成扇状地も沖積扇状地であることを扇状地会議で主張するとともに,巨大扇状地のどこまでが沖積扇状地といえるのか,沖積扇状地としての最低勾配など基準策定のための準備を行った。 カナダで6月に開催された扇状地会議では,「扇状地の線引き」がテーマの一つとなっていた。日本での扇状地とデルタの区分について報告するとともに,「湿潤地域の河成扇状地も沖積扇状地である」ことを主張した。その結果,基調報告に加え,まとめにおいても,「河成扇状地は沖積扇状地である」と指摘され,扇状地研究者には認められたた。9月の南京および3月の台湾で開催された地形学関係の学会でも,ニュージーランドのデータを加え,「河成扇状地も沖積扇状地である」ことを主張した。 巨大扇状地のどこまでが沖積扇状地といえるのか判定するための準備段階として,インド・ネパールに広がるコシ川扇状地を調査した。日本の緩傾斜扇状地と同様に網状流河川が表面を流れているので,沖積扇状地の可能性が高い扇状地である。ネパールのビラトナガル付近で扇頂部の調査,インドのカティハール付近で扇端部の調査をし,いままで報告のなかった扇頂部での巨礫を見出し,コシ川扇状地が沖積扇状地であることを確信した。勾配がさらに緩く沖積扇状地であるのかどうか議論の対象となっているアフリカ南部のオカバンゴ扇状地について,沖積扇状地であるのかどうか今後検討すれば良いとの道筋を得た。
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