研究概要 |
沖積扇状地に河成扇状地は含められず土石流扇状地に限定される可能性が一時期あった。日本で一般的な河成扇状地も沖積扇状地であるとする場合には,そのことの主張のほか,巨大扇状地が沖積扇状地であるかどうかが問題になるので,その解明を目的とした。 具体的には,2007年のカナダでの扇状地会議で,「湿潤地域の河成扇状地も沖積扇状地である」ことを主張し,扇状地研究者には認められた。ただし,河成扇状地よりも大規模な扇形地形である巨大扇状地が沖積扇状地といえるかどうかが課題として残った。その解明のため,2007年度にはインド・ネパールに広がるコシ川巨大扇状地を,2008年度にはボツワナのオカバンゴ「扇状地」について,2009年度にはグランチャコに広がる巨大扇状地群について現地調査し,沖積扇状地ではない可能性が高い印象が得られたが,決定的な証拠は得られなかった。また,これらの巨大扇状地の集水域面積と扇状地面積を計測したが,集水域面積と扇状地面積の値が,相対的に規模の大きい沖積扇状地の関係式の延長線上にあり,関係式上では巨大扇状地も沖積扇状地であることを否定できない状態であった。しかし,相対的に規模の大きい沖積扇状地(コスタリカのヘネラルバレーとアメリカ合衆国のサンワキンバレー)の関係式が,他の沖積扇状地の関係式からかけ離れていて,そもそも正しいのかが新たな検討課題であることが明きらかになった。もし違っていれば,巨大扇状地が沖積扇状地とは異なる根拠が得られることになり,課題が解決することになる。これらのことを,9月に台北(台湾)で開催された地形学関係の学会で発表し,また埼玉大学教育学部地理学研究報告でも報告した。
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