研究概要 |
<目的>日本において,これまでに氷河地形・堆積物とされてきたものの最終的な成因を,地すべり地形・堆積物との識別・比較を交えて発達史地形学・堆積学・第四紀学的な観点で再検討した.平成20年度の研究地域は,氷河地形・堆積物と地すべり地形・堆積物がいずれも発達する飛騨山地北部の白馬岳周辺のほか,同中部の蝶ヶ岳東面とした. <研究実績> 1,野外調査:5〜10月に複数回の現地調査(長野県白馬村・小谷村・安曇野市)を行い,露頭面の詳細スケッチや写真撮影,測量,各種試料の採取を行った.今年度はとくに蝶ヶ岳東面において従来堆石堤と考えられてきた地形の調査を集中的に行い,その構成層が著しく破砕された崩壊性の砕屑物を主とすることを突き止めた.また蝶ヶ岳東面には崩壊前駆地形とされる線状凹地や岩盤クリープ性の地形(バルジ,尾根の切断など)が発達することを明らかにした. 2,堆積物の堆積学・構造地質学的分析:白馬岳や蝶ヶ岳で採取した試料(未固結堆積物)の粒度組成,色相,淘汰度,礫の円磨度,古流向,ファブリック解析を現在試みている. 3,地形と堆積物の編年:広域テフラや14C年代測定法による編年を行った.<研究成果のとりまとめ> 依然として氷河性か地すべり性かの識別が難しい事例が日本アルプスにはあるものの,丹念かつ基本的な地質記載を行って多数の地質パラメータを取得するほか,空中写真判読や高精細DEMによる地形陰影図解析等の慎重な地形分類を行えば,相当数の崩壊地形・崩壊前駆地形が認識されることが明らかとなった.逆に,地形情報だけに頼った成因の認定は時に誤認を招く可能性があることも理解された. 蝶ヶ岳東面の研究成果を日本地理学会において口頭発表するとともに,査読付学会誌に投稿した(現在審査中).またそれ以外の成果も現在とりまとめを進めている.
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