平成19年度は、経済のグローバル化にともなう日本の牛肉輸入の量的・質的変化を、牛肉輸入自由化(1991年〜)とBSE問題によるアメリカ産牛肉の禁輸・制限(2003年〜)という2つの契機に着目して実態解明を行った。具体的には、財務省「貿易統計」の分析ならびに、農畜産業振興機構と全農全国本部でのヒアリング及び資料収集を行った。 その結果、1991年の自由化は、(1)アメリカ・オーストラリア産を中心に輸入量の急増をもたらしたこと、(2)冷蔵での輸入割合が高まるなど高品質な牛肉の需要が高まったこと、(3)アメリカ産はバラ肉など特定部位の輸入が増加したこと、(4)オーストラリア産はフィードロットでの短期飼養による牛肉の輸入が増加したこと、などが明らかになった。また、オーストラリアには日系資本による直接投資が進んだことも明らかになった。一方、2003年以降のアメリカ産牛肉の禁輸・制限は、牛肉の対日輸出におけるオーストラリアの一人勝ちの状態を生み出した。しかし、オーストラリアは国内市場が狭く日本市場とは消費嗜好がことなるため、日本向けに生産した牛肉は全量を日本に輸出することを前提にしている。したがって、部位ごとに輸入したい日本側とはズレがあり、必ずしもアメリカ産の代替とはなっていないことも明らかになった。 また、自由化以降の日本の周辺地域における肉用牛飼養の動きとしては、北海道・南九州とも規模拡大傾向にあることが明らかになった。しかし、酪農副産物としての乳用種の飼養が中心の北海道では、肉質的に輸入牛肉との競合が激しく、酪農の不振とも相まって飼養頭数と採算の両面で不安定で、現在でも政策的な価格補填制度に依存している傾向が強いことも明らかになった。
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