研究概要 |
本研究は東アジアの湖沼・干潟の環境問題とその問題状況下での資源管理システムに関する調査を行うことを目的にしている。その2年目として,平成20年度はベトナム中部のラグーン域における急速なエビ養殖の拡大とその背後にある資源管理ルールの形成について,現地調査を行い,情報を収集した(8月28日-9月1日)。この地域では,1999年に大きな洪水があり,ラグーン前面の砂州の決壊とその後の海岸浸食,湖岸及び沿岸におけるエビ養殖の拡大といった急速な環境変化が進行している(平井ほか,2004,Hirai et al,2008)。衛星写真などで確認しても,大洪水後のエビ養殖の拡大は顕著である。今回の調査では,エビ養殖の拡大状況を現地で確認ずるとともに,いくつかの典型的な地区を選んで,コミューン関係者への聞き取り調査と,漁民世帯への聞き取り調査を行い,水産資源利用と湖の環境管理をどのように行っているのか,環境変化にたいして個々の漁民がいかに対応しているのかを調査した。養殖は,おおまかに分けると,湖岸域に養殖水田を作って行うものと,かつての定置網を利用して(開放部を塞いで)湖内に生け簀をつくり,そこで粗放的(餌も薬も投入しない)な養殖を行うものとがある。その各場所を利用する権利は,個人が対価を払い,占有権を得ている。湖内の生け簀養殖は,新規に開設できないほど湖内を埋めてしまっている。一時期,過密になりすぎて水質悪化による被害が生じたこともあり,ある程度,配置が行政の指導で整理された部分もある。今回の調査は,このような情報を現地で収集してきた段階であり,今後,分析を加える予定である。なお,昨年まで継続していた韓国のセマングム干拓問題については,本年度は成果をまとめることに努め,淺野他(2009)などとして成果を報告しつつある。
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