研究概要 |
関東平野において,火山灰編年学的手法により地形と地下地質の構造を明らかにし,その平野形成モデルを構築するため,平成21年度は,以下の研究を行った.すなわち昨年度調査が完了しなかった町田コアの深度265m以上,また稲城コアの深度100m以上についての観察を行ない,あわせて新規に三鷹コアの505.5m分の観察を行なった.それぞれの堆積物・テフラ記載とテフラ試料の採取を行ない,扱ったテフラ全てに対して超音波洗浄器による洗浄を施し,その後,実体顕微鏡を用いて斑晶鉱物・火山ガラスの観察を行った.それらの中,火山ガラスが卓越するガラス質火山灰層試料については,温度変化型屈折率測定装置とエネルギー分散型X線分析装置を用いた火山ガラス・斑晶鉱物の屈折率測定と火山ガラスの主成分化学組成分析を行なった.また,微量成分化学組成測定を目的としたICP分析を外部委託により行った.その結果,町田コアの試料については4枚の既知のテフラ(津池火山灰層)との対比,稲城コアの試料については5枚の既知のテフラ(Kd23B,Kd24,堀之内第1,Omn-Kd25,津池火山灰層)との対比がそれぞれ示唆され,また未知のテフラであるが町田南・町田・稲城の3コア間で対比できる複数のテフラの存在が明らかとなった(一部は前年度のものを補強するデータ).三鷹コアについては,NG-Yr,Ym,Kd24,堀之内第1,Omn-Kd25の対比がなされた.上記と前年度まで得られた成果を総合し,主要テフラの深度分布図を試作した.これをもとに立川断層,鶴川撓曲,溝ノロ向斜などの地質構造による堆積物の変位量を評価した.その上で,これらデータと既存のデータを統合し,フィリピン海プレートの沈み込みに起因する前弧海盆でありながら,陸上に位置するという特殊性をもつ関東平野の形成モデルを考察した.
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