研究課題
近年、活断層から発生する地震を評価する上で、延長の短い活断層が地震時にどのような挙動をするのかに関心が集まっている。本年、原子力安全保安院は長さ20km以下の短い活断層は、長さにかかわらず最大地震をM6.8と評価すると決めた。しかし、成因の区別なしに短い活断層の最大地震を一括して決めることは、過大評価となることは明らかである。本研究では延長の短い断層の特徴・成因を明らかにするため、海成段丘を切る活断層に注目してその挙動や地震活動との関連を考察している。平成20年度は33回万国地質学会議に参加して、スカンジナビア半島のアイソスタシーによる地震隆起と断層を見学した。特定の活断層が存在する訳ではないが、認められた断層変位は既存断層の再活動が大部分であった。その他、下北半島、御前崎、福井越前岬周辺の短い活断層を検討した。前2者は短い孤立した断層で、先第四系の既存断層・摺曲構造と一致している。一方、後者は沿岸沖に大規模な活断層(和布一干飯崎沖断層)が併走しており、そのバックスラストと考えられる。昨年度の調査と併せて、海成段丘を切る活断層はこの2種類のタイプに分類される。後者は沖合に存在する主断層の運動に伴う副次的な断層で、その長さは発生する地震の大きさとは関係しない。ただ、その活動時期は主断層の活動時期を知る重要な手掛かりになる。前2者の発生要因はまだ不明である。断層が短いので、長大な断層が伏在している可能性は低いが、地震発生層との関係を検討する必要がある。地震発生層の上限が浅い場合は地表に起震断層の一部が出る可能性がある。この場合はM7級の活断層として評価することは妥当であろう。しかし、地震発生層が厚いところでは異なる考察が必要であろう。21年度はこのような断層を対象に地震発生層の深さや厚さなど深部構造を含めた検討を行う。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Jour. School of Marine Science and Technology, Tokai Univ. 6
ページ: 1-14
第四紀研究 47
ページ: 103-119