変化が著しい現代中国の都市空間をよく理解するためには、既存の行政区画を前提とせず、都市内部の空間構造の再編から対外的な連携関係の構築までを、統合的にかつ動態的に考察することが不可欠である。このような問題意識に基づき、近年活発に議論されている「グローバル都市地域」の論点を参照しながら、中国における新しい都市空間の形成を実証的に解明することが、本研究の目的である。 平成19年度の研究活動は、福建省福州市およびその管轄下にある福清市における2回の現地調査が中心であった。第1回目の9月には、福建師範大学地理科学学院の研究者に今後の協力を要請すると同時に、華僑の出身地として著名な福清市が福州大都市圏の空間構造を理解するための鍵になると認識して、幅広くこの地域に関する知見を得られるように努めた。第2回目の3月には、現地における各方面への聞き取り調査や諸資料の収集を本格化し、次年度の本調査への見通しをつけることができた。歴史的な華僑による地域(あるいは国境)横断的なネットワークや、近年の経済発展にともなう活発で多様な人口動態を観察すると、単純に同心円的ではない都市空間構造や、単純に階層的ではない都市システムを想定しなければならないことに気付かされる。 さらに広東省広州市の中山大学地理科学学院の研究者を訪問し、珠江デルタ地域における今後の調査活動に関する協力を要請した。
|