変化が著しい現代中国の都市空間をよく理解すべく、近年活発に議論されている「グローバル都市地域」 の論点を参照しながら、中国における新しい都市空間の形成を実証的に解明することが、本研究の目的である。 第一に、中国の都市構造や人口移動などに関する内外の研究成果を収集した。特に2月中旬の香港での収集作業を通じて、その中で、先行する議論と自分の研究内容との接合を改めて図るべきであることが痛感された。 第二に、福建省の事例について検討を行った。経済的には発展が著しい進んだ地域というイメージがあるにもかかわらず、外国人による「調査」活動に対しては比較的厳しい制限が存在し、福建師範大学の研究者たちの協力を得ながら可能性を探り続けたものの、当初計画していたような本格的な現地調査を行うことができなかった。前年度に実施できた予備調査の成果を大切にしながらも、引き続き収集に努めている統計データや地誌的な資料および上述の先行研究などを組み合わせて考察をするように方向転換をした。 第三に、広東省の事例について検討を始め、予備調査を8月に2週間近くをかけて行った。中山大学の協力を得て、珠江デルタ地域西部の江門市を中心とした四邑地方を視察することができた。この地を出身地とする華僑・華人の計画経済以前および市場経済以降の動き、そして近年の経済発展にともなう珠江デルタ地域の都市化としての動きを、重層的に理解する必要があるとの判断にいたった。 第四に、中国沿海部の都市化に関するシンポジウムに参加し、自らの内陸部に関する発表との比較を通じて、中国・北京・清華大学の顧朝林教授をはじめとした研究者と意見交換をすることができた。また、第五に、関連する研究成果として、北京に関する論考を発表した。
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