研究概要 |
1.ゾーニングのための基礎調査:上高地の河童橋から横尾までの歩道沿いの地形・地質露頭・河川・池沼・植生・人工物などのマッピングをおこない,その自然度の評価をおこなった.明神の3地点で通行量(歩行者数)調査と利用者のタイプを調べた.それに加えて上高地駐車場・ビジターセンター周辺で利用者からの聞き取り調査をおこなった.その結果,利用者の動態がかなり明らかになった. 2.地形自然度の評価調査:さまざまな時空間スケールで生じる梓川の洪水・氾濫現象について,100年〜10年スケールの氾濫史,河道内での地形変化を引き起こす降雨現象の規模,氾濫が引き起こす自然への影響について調査・解析を行った.その結果,10年〜20年間隔で大規模な氾濫が生じて氾濫原の地形,植物に影響をおよぼすこと,河道内の地形変化を引き起こすのは上高地において6月〜7月下旬に日雨量120mmを超える降雨であること,氾濫原への土砂と水の流入がさまざまな空間スケールの氾濫原の地形,植物多様性をつくり出していることが明らかになった. 3.植生自然度の評価調査:上高地梓川の明神-徳沢間の河床に発達する先駆樹種パッチの動態を調査した.河床の中でもっとも撹乱頻度が高い河床砂礫部には,ケショウヤナギ,オオバヤナギ,ドロノキ,エゾヤナギなどのヤナギ科植物に加え,タニガワハンノキ,ダケカンバ,カラマツなどの先駆樹種パッチが発達する.1994年から5年おきにこれらのパッチの大きさと群落高及び全個体の胸高直径(1.3m以下の個体は樹高)を測定しており,2008年8月に4度目の測定を行った.その結果,特にドロノキ群落の増加が著しく,それは洪水の影響の小さな発達した河畔林に近い部分で顕著であった.ドロノキ群落の増加には人工構造物(調査地の上流に設置された布団篭)が影響していることが示唆された.
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