本研究の目的は、日本の地方都市における中心商業地の変容を統計的に整理するとともに、中心商業地がその機能を維持するために有効と考えられる方策を検討することである。この目的に沿って、本研究は以下の3つのステップを設定した。第1に、商業統計など公的統計を用いて地方都市の中心商業地の推移を整理し、そのタイプ分類を行うこと、第2に、主に若年層を主要顧客とする店舗(業種)の成長に注目し、進出条件、顧客獲得の過程(インターネットを含む)、そしてこれらが形成する集積の特徴を明らかにすること、そして第3は、地方自治体における大型店政策の転換を検討することである。 このうち第1のステップについては、1991年以降の年次別商業統計を用いて、全国の地方都市における(1)商店数、(2)販売金額、(3)業種構成などに関するデータベースを作成した。第2のステップでは、さらに2つの研究テーマを設定した。その第一は、地方都市の中心商業地において、若年層向け集積の成立過程に関する研究である。第二は、商店街ホームページを活用した商店街の情報発信戦略に関する研究である。第一の視点については、中心商業地に路面店を中心とする若者向けファッション店舗の集積が顕著な地方都市を数都市を抽出し、店舗の存立構造・商圏範囲、集積形成の過程、損益分岐点など経営指標の概況、出店者の戦略、顧客とのコミュニケーション手段などについて、現地調査を含むデータ収集を行った。また第二の視点については、対象地域として大阪府下の12商店街を設定し、商店街のIT担当者、関連企業、行政の担当部署など多様な関係者へのヒアリング調査に着手した。第3の分析では、対象地域として大型商業集積の郊外誘致に積極的な両毛地区の2都市(太田市、佐野市)を選定し、両市の商業振興・都市計画関連部署におけるヒアリング調査とデータ収集を進めた。
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