本年度も、昨年度に引き続き、以下の3つのサブテーマに従って研究を実施した。第1は、郊外型大型店の出店計画に対する地方自治体の対応の検討である。郊外型大型店の出店が著しい群馬県太田市と栃木県佐野市を対象とした分析を行った結果、a)1998年の都市計画法改正とともに、用途地域の線引き権限の多くが地方に委譲されことにより、市街化調整区域あるいは地域公団による新都市計画地に商業地域を新たに設定し、大規模モールが進出していること、b)両市とも、中心商業地の衰退が顕著であり、消費の流失を阻止すると同時に、税収と雇用の確保を図る目的から、大規模モールの進出を自治体が事実上「誘致」していること等が明らかとなった。第2は、インターネットを用いた商店街の情報発信戦略の検討である。大阪市34商店街を対象とする実態分析の結果、a)買回り品を中心とする商店街が広域情報発信や電子商取引機能を重視する一方、近隣型商店街は地域情報の発信機能を重視すること、b)自治体の補助金が導入時期を規定すること、c)マスコミなど既存メディアとの相乗効果を持ち、商店街の知名度を上げる反面、個店に対する販売効果は少ないため、費用対効果の観点からプログなど新しい情報発信手法を模索していること等が明らかとなった。第3は、空き店舗対策として期待される新規出店店舗支援の検討である。2005年度に選任のタウンマネージャー(TM)を配置するとともに、地方自治体が懸賞金を出して新規出店店舗を募り、一定の効果を挙げてきた広島県呉市で実態調査を行った結果、a)専任のTMを常駐させることが、新規創業者の定着に大きな効果を持つこと、b)既得権者である旧来の商業者との調整を図る機関が必要であること等が明らかとなった。以上の成果の一部は、国際地理学会(IGU)あるいは日本地理学会等で報告した。
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