本研究は全国で発生している代表的なダム・河口堰建設反対・運用変更運動の特徴を、特に運動を展開する市民グループの属性、目標の置き方、運動の特徴等に焦点をあて、活動が社会的に許容され、問題解決へ繋がった道筋、失敗に至った道筋を明らかにし、その上で今も問題が継続し、対立の続く水資源問題のより現実的な解決策を提示することを最大の目的とする。 2008年度は以下の3点を中心に研究を行った。1点目は既存文献の読み込みによる対象問題の内容整理を行い、その概要を把握した。2点目は対象事例の計画目的の検証作業を、川辺川ダム計画、淀川水系流域委員会対象計画を中心に行った。3点目は現地のフィールド調査を行った。本年度は個別対象事例の徳山ダム、木曽川水系連絡導水路事業に関わる調査を実施した。また、淀川水系のダム計画について関係者からの聞き取りを行った。 以上の研究から得られた知見については、研究全体に関わる水資源問題の概要を「水資源利用のサステナビリティ」の題名で地理教育研究会において発表し、金沢大学文学部地理学教室編に論文を掲載した。個別事業については木曽川水系連絡導水路計画について、『水資源計画の欺瞞-木曽川水系連絡導水路-』(ユニテ)を2008年5月に刊行するとともに、その概略を経済地理学会関東支部例会で発表、『ARENA』6号に論文「木曽川水系連絡導水路計画をめぐって-繰り返される科学なき欺瞞-」として掲載した。その他、2007年度に個別ダム・河口堰問題の概要をまとめて提出していた原稿が日本科学者会議編・日本環境学会協力『環境事典』(旬報社、2008年11月、35項目担当)として刊行された。
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