2009年度は研究計画最終年度にあたり、これまでの調査結果のまとめと補足調査を行った。ただ、2009年9月に民主党政権が誕生したことにより、本研究の枠組みそのものが大きな影響を受け、ダム・河口堰建設反対・運用変更運動を展開する市民グループにおいて、これまでの運動の成果と今後の展望をめぐる議論が単純に整理しきれなくなってしまったのが実際であり、大きな反省点である。 従ってこれまでの調査・検討から得られた知見はかなり断片的にならざるを得なかった。個々の成果については、水資源開発を巡る上下流関係の問題整理については2009年7月、農山村政策研究会において、まさにダム計画中止後の地域社会づくりの重要性に焦点を当てた発表を行った(「水資源開発と山村社会」)。また、ダム・河口堰の代替案を巡る議論については2010年1月、総合地球環境学研究所の未来設計イニシアチブ/水の研究会において、木曽川水系を事例に低水管理のあり方についての発表(「木曽川河川水利システムの課題-低水管理における河川維持用水、農業用水の位置づけ-」)を行った。そして、全国のダム・河口堰建設反対・運用変更運動の特徴について、2010年3月、日本地理学会春季学術大会で「流域概念の多義性と水問題」という題目で発表した。また、本研究課題と関連して2009年7月、埼玉県さいたま市(大宮ソニックホール)で開催された第51回自治体学校で水の分科会を開催し、「ダム・河口堰建設を止めないと国が滅ぶ」という題名の講演を行った。 2010年4月時点において出版物として得られた成果はないが、本研究課題のまとめとの一部をなす「公共事業をめぐる状況と住民運動」(山本佳世子編『市民参加からの地域環境学』古今書院共著(10人))が2010年5月に刊行予定であり、引き続き残りの成果も公にする予定である。
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