河口域生態系の物質循環機能を理解し、その健全性の評価に資することを目的として、生態系における炭素・窒素循環プロセスを解析するための安定同位体比技術を応用した手法の構築を進めた。本研究課題は平成20年度末まで継続する予定であるが、平成19年度内に実施する予定であった調査計画の一部を、他のプロジェクトの計画変更の影響を受けて平成20年度に延期する必要が生じたため、平成19年度の交付金の一部を20年度に繰越して使用することとした。このたび繰越分の研究が完了したため、本実績報告書を提出する。 現段階では、夏季の豊水期(台風シーズン、19年9〜10月)および夏季の渇水期(20年6〜7月)における観測と試料採集活動を変更後の予定通り実施し、目的を達成した。本研究課題が終了する平成20年度末までに、得られている試料の分析、データ解析を進め、成果を得る見通しである。 またこれらの調査と並行して、すでに得られている溶存無機炭素の炭素安定同位体比および硝酸イオンの窒素・酸素安定同位体比のデータの解析を行った。二酸化炭素のガス交換を考慮した炭素安定同位体比の同位体マスバランスモデル、および河川内プロセスと外部負荷の影響を区別できるように工夫された窒素・酸素安定同位体比のスパイラリングモデルを新規に開発して適用することにより、マングローブからの無機炭素流出と流域からの硝酸塩負荷を定量的に解析する見通しを得た。 なお、平成19年度交付金の繰越による研究は当初は本年6月30日に終了する予定であったが、研究室のセミナーの休講日数を最小限に留めるために調査日程を研究船航海の日程に合わせたため、調査の一部が7月上旬にずれ込んだことをお断りしておく。
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