研究概要 |
降水中水銀および大気中ガス状原子水銀の観測を継続するとともに,大気中粒子状水銀に関する検討を行った。【降水中水銀】富山県富山市にて降雨を採取し,これに含まれる全水銀を定量してデータを蓄積した。降雨イベントごとに全水銀濃度が変動することがあらためて確認された。また,富山市で採取した降水をメンブレンフイルターでろ過し,降水中の溶存態水銀と粒子態水銀とを定量したところ,富山市で採取した降水に含まれる水銀のうち約60%が粒子として存在していることが明らかとなった。【大気中ガス状原子水銀】富山県射水市ならびに富山市において,24時間×4日間の多点観測を数回実施したところ,観測地点によりガス状原子水銀濃度が異なること,4日間の濃度変動挙動は各地点で異なる場合が多いこと,などがあらためて確認された。【粒子状水銀】富山市において,ローボリュームエアーサンプラーを用いて3~10日間大気中エアロゾルを分級捕集し,粒子径ごとの全水銀を定量したところ,採取期間ならびに採取地点によりその分布が大きく異なることがあらためて明らかとなった。また、ハイボリュームエアーサンプラーを用いて大気中エアロゾルを捕集し,超純水,塩酸,塩化臭素水を用いて水銀を抽出したところ,超純水と塩酸とではほぼ同じ水銀量を示したが,塩化臭素水では大きく増加する傾向を有していた。塩化臭素水で抽出された水銀量を1とすると,超純水、塩酸で抽出された水銀量は0.4であり,これは降水中全水銀に対する溶存態水銀の比ときわめて近かった。このことから降水に含まれる水銀は大気中粒子状水銀が大きな供給源となっている可能性があると考えられた。
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