研究課題
大洋スケールの魚類バイオマス変動の謎を解き、有用魚類資源の長期動態と将来予測にとって極めて重要となると考えられる、別府湾堆積物中のカタクチイワシ及びマイワシの魚鱗アバンダンスの過去1500年間の変動記録を明らかにした。また、その魚類資源変動を引き起こす低次生産及び海洋構造の動態を調べた。その結果は、以下にまとめられる。1.タクチイワシ及びマイワシ資源は、過去1500年間で100年及び1000年スケールで変動する事が明らかとなり、これが太平洋を隔てたカリフォルニア沖の両資源のアバンダンス変動と連動している実態が明らかとなった。2.カタクチイワシには、3つの主な回遊群があり、鱗の炭素・窒素安定同位体比を調べた結果、別府湾に来遊する回遊群は、宮崎沖から豊後水道を主要索餌場とする太平洋発生群である事がわかった。この事から、別府湾のアバンダンス記録は、こうした太平洋発生群の資源変動を反映している事が示唆された。3.鱗の重金属分析の結果、回遊群の同定には利用できない事がわかったが、過去1500年間の重金属組成比Cd/Cu比がカタクチイワシ資源が最も多い時期に高くなっている事がわかった。これは、なんらかの海洋構造の変化と関連していると考えられ、追跡調査によって、今後資源変動を支配する重要な海洋構造変化のシグナルを抽出する可能性がある事がわかった。4.別府湾内の低次生産変動記録には、100年スケールの変動がある事がわかった。しかし、この変動パターンは必ずしも魚鱗アバンダンスと関連しているとは限らず、別府湾内のローカルな低次生産がカタクチイワシやマイワシ資源と関連している可能性は考えにくい。5.珪藻化石群集組成から、別府湾周辺の夏季平均気温が復元できる事が明らかとなった。この変動は、カタクチイワシやマイワシ資源と連動している事も明らかとなり、両資源が大気現象と関連している可能性が示唆された。
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The Holocene 19
ページ: 285-294
月刊海洋 40
ページ: 448-453