本年度は、アレイ化に供する微生物素材の創製について研究を行った。特に、土壌修復現場において検出が要望される芳香族化合物(ナフタレン類)、カドミウムのような重金属、セレン酸などの毒性アニオンに対する代謝遺伝子を遺伝子工学的手法によって、代謝関連遺伝子の調節部位下流域に発光遺伝子を融合することを試みた。本実験においては、大腸菌をホストとしてlacZ-Xgal、発光遺伝子、gfpなどをレポーターとして用いたプロモーターアッセイベクターを利用したランダムクローニングアッセイによって目的遺伝子の探索、スクリーニングを実施した。加えて、エレクトロポレーション装置などを用いて簡便にホスト株に遺伝子を導入、発現を検出できるかを試みた。その結果、セレン酸に応答能を有すると思われる遺伝子断片をセレン酸還元菌から大腸菌にクローニングすることに成功した。さらに、データベースから得られたプロモーター性遺伝子のシーケンス解析、既知プロモーター性遺伝子配列との比較などの研究を行い、発光遺伝子の上流域に挿入する遺伝子の素性、特性についての調査をおこなった。これまでのところ、プロモーター性の遺伝子配列の存在をいくつか確認でき、大腸菌における発現可能性を検証している状況である。次にチップ上に固定化された微生物の生体活性を安定に保持・制御できる技術開発を目的として微生物細胞の包埋にアルギン酸ゲルをはじめとする各種保水性高分子ゲルの利用、凍結乾燥技術の応用や無機塩類などを含む活性化溶液の添加などによる細胞活性保持・再活性化方法の開発について検討し、シリカゲルによる固定化、レスティングセルの利用によって4℃で約1ヶ月の保存が可能であり、1週間保存したチップによるBOD計測が可能であることが確認された。また、これらと同時に、市販のデジタルカメラなど携帯可能な受光用CCDデバイスの改良、さらに微生物チップの活性化を目的としたウォーマーなどを備えたオンサイト計測が可能な測定システムを提案した。
|