干潟土壌に存在するプロテアーゼについて、広島県竹原市賀茂川河口干潟底質土壌を対象に電気泳動的手法を利用して分子量の異なる複数のプロテアーゼの季節変動を明らかにした。さらに試料となる多くの底質土壌の総プロテアーゼ活性を数値的に計測する手法について検討を行った。その結果、アゾカゼインを基質とし、TritonX-100を含む反応溶液を用いることにより、土壌プロテアーゼ活性を定量的に測定できることが明らかになった。この結果は、今後干潟の多様な環境条件の中で、各プロテアーゼがどのように分布しているかマッピングをする上での有用な手法になると思われる。また干潟底質土壌の環境を評価する上で間隙水の採水法について様々な検討を行った。その結果、珪酸ガラスフィルターを介しポンプによって土壌間隙から採水する方法が最も適していることがわかった。さらに、底質土壌間隙水の硝酸、アンモニア、リン酸、ATPバイオマスについて、従来の方法の問題点を検討し、より精度と信頼性の高い方法を確立したことも本年度の研究成果である。 こうした成果により、次年度の干潟プロテアーゼの生態的特性について総合的に検討するという目標に対する技術的問題は、平成19年度においてほとんど解消できた。 さらに、今年度の研究過程において、土壌微生物以外に、藻類及び珪藻プランクトンからもプロテアーゼが分泌されていることを見いだし、それらのプロテアーゼを電気泳動的に分離・分析することができた。この結果は赤潮等でのプランクトンブルーミングにおいて有意な有機物加水分解が海水、沈降した底質土壌において生じる可能性を示しており、赤潮が示す生態的インパクトについての考察にも本研究課題が波及することが明らかになった。
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