研究概要 |
本研究では,畑地流域を流下する河川の窒素汚染についてその動態を明らかにし,制御方法を模索することを目的としている.平成19年度の成果としては,硝酸性窒素汚染の激しい河川である高田川の環境基準点で1日2回の採水を365日行い,その変動特性を明らかにした.その結果,硝酸性窒素濃度は年平均17.5mg/Lであった.これは,降雨時のデータを含んでいるため晴天時だけに絞ると,20mg/L以上の濃度であった.この日変動は,この地域の特産品であるキャベツへの肥料施肥の時期及び降雨時に一致していた.すなわち,肥料施肥時期には濃度が増大し,降雨時には減少していた.また,流域内のどの地点(上流,下流,本流,支流関係なく)でも河川水は高濃度であった.このことから,高田川の硝酸性窒素汚染は,畑地への肥料施肥との関係が示唆された.さらに,その起源を推定するために窒素同位体比を検討した.その結果,河川水は10〜15%であり,起源解析から有機肥料あるいは家畜排泄物に起因することが推測された.さらに,台地上に広がる野菜畑からどのような経路で滲出してくるかを検討するために高田川流域の谷津地形の一つで台地からの滲出水を毎月サンプリングし,その特徴を検討した.この谷津地形は,左岸側の台地は畑地,右岸側は神社と土地利用形態が異なっている.その結果,畑地側では肥料施肥時期に合わせて濃度が上昇し,神社側は年間を通して変化がなかった.また,その濃度に大きな違いがあった.畑地側は,平均硝酸性窒素濃度9mg/L,神社側は平均0.5mg/Lであった.それぞれの,窒素同位体比を測定してみると8‰前後と差はなかった. これは,神社の後背地に畑地が広がっており,濃度には影響を与えなかったが,同位体比には影響を与えたと考えられる.この同位体比は有機肥料と化学肥料の起源が示唆された.以上,19年度の成果は,表流水の高濃度硝酸性窒素の原因は畑地に散布される肥料の影響を確認したことである.
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