20年度は畑地から湧出する浸透水について重点的に調査を行った。(1)は台地上に畑地及び畜産施設を持つサイト(2)は台地上に畑地しかないサイトを選んだ。(1)の台地は右岸側に一部神社がありその部分は耕地開発の以前の台地の形態をしており、その後方に畑地と畜産施設がある。一方、左岸側の台地は畑地と畜産施設のみである。ここでの侵出水の硝酸性窒素濃度は、右岸側の神社下では0.5ng/L前後であり、後方の畑地下では8mg/L前後の値を示した。左岸側では上流から下流にかけて7.2〜11mg/Lの高い値を示した。また、9月から12月にかけて侵出水中の硝酸性窒素濃度が上昇していたが、これは高田川本流と同じ挙動であり、流域内での同一の環境変化(肥料散布等)が考えられる。しかし、窒素同位体比だけの結果からは高硝酸性窒素の起源が畑地の肥料由来か畜産廃棄物かは明確に区分できなかった。そこで(2)台地上に畜産施設のない調査地点での侵出水の調査を行った。調査期間は9月〜12月である。9月19日から20日の総降水量84.5mmの降雨時の侵出水の流量変化をみると降雨ピークとは若干時間遅れはあるが、かなり早い時期に流量ピークは認められた。その時の硝酸性窒素負荷量は、降雨上昇期と下降期に認められた。しかし、硝酸性窒素濃度は降雨初期に若干上昇(31mg/L→32mg/L)するものの、降雨中は28mg/L程度まで下降した。一方、溶存有機態窒素が降雨初期に1mg/L程度であったものが2mg/Lまで上昇した。このことから、降雨に伴い、畑地表層部分にある有機窒素成分が硝化される前に流出している可能性を示している。すなわち畑地に存在する窒素成分は降雨時には、今まで予測されていたよりかなり早い段階で環境中に流出していることが示唆された。また、11月初旬から総窒素に対する硝酸性窒素の割合が減少し、溶存有機態窒素の割合が増加している。この時期、畑地ではキャベツの植え付け時期で、施肥が盛んに行われている。このことは9月の降雨時と同じで畑地に散布された有機態窒素がかなり早い段階で流出していることを示しており、窒素成分の畑地での滞留時間がかなり短いことを示唆している。さらに11月の硝酸性窒素の窒素同位体比、酸素同位対比から硝酸性窒素の起源は、堆肥の可能性が高いことが示唆された。これらを総合的に判断すると高田川の硝酸性窒素汚染の起源は畑地に散布される肥料である可能性が大きい。
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