研究概要 |
本研究は,海底堆積物から底層水中へのケイ酸塩およびバリウムの溶出の実態を確かめるために,生物生産の高い海域と低い海域とを対比的に調べることを目的としている.本年度は,東太平洋赤道域を南北に縦断する測線(西経95度,北緯8度から南緯8度)においてマルチプルコアラーを用いて採取された8試料を重点的に分析した. 1.間隙水中の化学分析結果 赤道直下のコアにおける間隙水中ケイ酸塩は,表層の250μmol/lから下層に向かって急激に650μmol/lに増加し,それ以深において一様となる鉛直分布を示した.この赤道直下のコアを軸に,南北高緯度に向かって採取されたコア中の間隙水ケイ酸塩の濃度レベルは徐々に減少した.このことは,赤道湧昇によるケイ質プランクトンの生産の分布と良い対比をなしている.すなわち,間隙水中のケイ酸塩の濃度レベルの緯度変動は,表層から沈降して海底に堆積する生物起源オパールの堆積量を反映している事が明らかとなった. 2.堆積物の前処理 堆積物コア試料は,すでに船上にて0.5cmないしは1,0cmごとに各層に分取されたものを用いた.化学分析の前処理として凍結乾燥し,粉末状に調製した.このような化学分析のためのコア試料の前処理は,東太平洋赤道域の8コアの他に,太平洋中央域の北緯55度から南緯67度にかけて採取された17試料についても同様に粉末試料に調製した. 3.堆積物中の重晶石の同定と定量 粉末試料中の重晶石粒子(密度は約4g/cm^3)を定量するために,オーストラリアCentral Chemical Consulting PtyLtd製の重液(LST:タングステン酸塩の調整品.密度2.85g/cm^3)を入手し,X線マイクロアナライザーを用いて同定・定量する方法を開発中である.
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