本研究はオヒルギに代表される塩生植物が塩ストレスに対して示す電気化学的応答を調べ、新規塩ストレス評価手法を模索することを目的としている。 本目的を達成するため、平成19年度において具体的には以下のとおり研究を行った。恒温恒湿室で生育しているオヒルギに(1)ピアノ線電極、ならびに(2)心電図測定用ゲル電極、の二種類の電極をそれぞれ装着し、電極間インピーダンスを経時的に測定した。明・暗環境、および真水・塩水環境においてインピーダンスの違いを評価した。温度を25℃、相対湿度を75%に維持して測定を行った。(1)ピアノ線電極を用いた場合、インピーダンス値が安定するまでに2〜3日を要したが、その後半年にわたって極めて再現性の良いインピーダンス経時変化が得られた。一方(2)ゲル電極を用いた場合、インピーダンス値は数時間で安定したものの、2ヵ月後にはゲル部分の乾燥のためインピーダンス経時変化の再現性は損なわれた。どちらの電極を用いた場合でも、明環境および塩水環境においてより大きなインピーダンス値が得られ、暗環境および真水環境においてはより小さい値が得られた。得られた結果から、明環境および塩水環境において植物の含水率が低下し、そのため植物体のイオン伝導性が低下したために、より大きなインピーダンス値が得られたものと推察された。 本年度の結果より、インピーダンス値を測定することで植物の含水率を推定することが出来る可能性が示唆された。
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