温度と湿度を一定に保った実験室で塩生植物を生育させた。この植物に対し、海水と同等の塩濃度を示す塩水を与え、どのような変化が起こるかを調べた。具体的には、葉からの蒸散量、根からの吸水量、樹液の流速(サップフロー量)を調べた。葉からの蒸散量の測定には、超小型温湿度ロガーを用いた。この装置は植物に対する負荷を極力小さくした測定が可能であり、また長期間無入測定ができると言う利点を持っている。本装置では直接蒸散量を測定することは不可能である。そこで、葉表面近傍の湿度を測定することで蒸散量を推定する方法を検討した。スペーサーを介して装置を葉の裏に装着し、は表面・装置間体積と測定湿度、外気の湿度、および温度を反応拡散方程式に代入することにより、蒸散量を計算した。結果として、最適なパラメータ(拡散係数)を指定することにより、従来法と同様の蒸散量測定が可能であることが示唆された。このことにより、塩生植物の葉に温湿度ロガーを装着することで、フィールドにおける多点同時測定が可能であることが示された。根からの吸水量の評価を行う際には、水位がどれだけ下がったかを計測する方法を用いた。本方法は目視によ るものであり、今後光もしくは電気的手法によって無人化をはかる必要がある。樹液の流速測定においては、モデル植物としてアズキの茎内流速の測定を行った。照射する光の強度によって樹液流速が変化することを確認した。 以上の方法で、フィールドで植物の吸水・蒸散プロセスを評価することができるようになった。塩ストレスによって一時的に蒸散量が減少し、回復することを明らかにしている。従って、今後根からの吸水量とサップフローをあわせて評価することが重要である。
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