研究概要 |
本年度は,韓国の全谷里遺跡のダスト堆積物に含まれる超常磁性から単磁区の粒径分布を交流磁化率測定により推定した.全谷里遺跡のダスト堆積物は中国黄土高原の黄土-古土壌に対比できるシークエンスを示す,Bartington社の磁化率計で測定した質量磁化率の値は黄土高原とほぼ同じで黄土-古土壌に対応して変動するのに対して,磁化率の周波数依存性は黄土,古土壌を問わず約10%の高く一定した値を示す,超伝導磁化率計MPMSで交流磁化率の温度・周波数依存性を測定し,in-phase成分と。out-of-phase成分に分けて粒径分布を推定した.磁性鉱物の種類を決めるため,熱磁気天秤によってキュリー点を求め,MPMSを使いVerwey転移の有無を調べた.マグネタイトのキュリー点(〜580℃)が顕著に見られるが例外なくマグヘマイトの存在を示す含50-400℃のkinkが見られる.Verwey転移は黄土,古土壌ともに見られず,部分的にマグヘマイト化されたマグネタイトが主たる磁性鉱物である.MPMSを用いて300Kで測定した質量磁化率は,Bartington社製の磁化率計で測定した値とほぼ一致する.また,磁化率は周波数の対数に対して直線的に変化し,Bartington社製による測定と同様に黄土,古土壌によらず10%前後の高い値を示す.20〜300Kのいずれの温度においても,交流磁化率の振幅の値は明瞭な周波数依存性を示し,out-of-phase成分はin-phase成分の数%に達する.一方,温度に対してin-phase成分は,20〜300Kの間でブロードなピークを示すか単調に増加する.全谷里遺跡のダスト堆積物は黄土,古土壌によらず超常磁性〜単磁区のマグネタイト/マグヘマイトが含むが,その粒径分布が広いために磁化率の周波数依存性は10%前後のほぼ一定の値をもつ.
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