気象庁の観測定線の西部北太平洋東経137度と東経165度の海洋内各層における溶存酸素濃度のデータに基づいてその長期変化を解析し、亜熱帯北部の亜表層や北太平洋中層水下部で、溶存酸素濃度が顕著に減少していることが分かった。その変動から、特に亜熱帯北部の亜表層で、海洋内の溶存酸素濃度の低下と全炭酸濃度の増加を引き起こす有機物分解の増加が、海洋内の全炭酸濃度の増加や酸性化に対して顕著に寄与していることが分かった。また、酸素濃度の鉛直勾配が大きい中層では、地球温暖化に伴なう海洋温暖化(水温上昇)による等密度面の深化が、等密度面上の溶存酸素濃度の減少傾向に対して、見かけ上、顕著に影響していることが分かった。 これまでの観測結果などに基づいて改良された高速応答の溶存酸素センサーRINKO-IIIを、気象庁の3隻の海洋観測船に搭載し、CTD-採水システムに取り付けて観測を行った。その結果、従来の採水試料のウィンクラー滴定法と併用することで、センサー性能に残る応答ドリフトや圧力ヒステリシスの影響を補正でき、1μmol/kg未満の高い精度で溶存酸素濃度の鉛直分布を連続的に観測できた。これまで明らかにできた海洋中層における酸素濃度の微細構造のほか、黒潮-親潮混乱水域の観測や、秋に亜熱帯域の亜表層に見られる生物生産起源の酸素極大層の調査にも威力を発揮することが分かった。さらに、CTDに搭載できる唯一の実用的な生物地球化学的パラメーター用センサーとして、全炭酸濃度の鉛直分布の内挿にも効果的なことが分かった。
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