研究課題
温帯や熱帯の植物と同様に、極地に自生するコケや顕花植物にも植物病原菌が広く感染し、一部の地域では枯死などの被害が発生している。これら極地の植物病原菌の多くは、これまでに報告の無い種であり、それらの生態についての情報はほとんど無い。一方、近年の気候温暖化により植物病原菌と宿主植物とのバランスが崩ずれ、新たな植物病原菌による被害が温帯域で頻発している。これは、高温ストレスや豪雨多発による傷害が、宿主植物の病害抵抗性を弱め、新たな植物病原菌による被害を受けやすくなったためと考えられる。温暖化が急速に進んでいる極域では、このような現象が温帯域よりもより早く進行している可能性がある。この研究の目的は、極地に発生する植物病原菌を対象とし、それらを同定して宿主植物の生存に及ぼす影響を明らかにすることである。本年度は、まず極地のコケに広く感染している土壌糸状菌のPythium属菌を効率的に分離するための培地を開発した。そして、この培地を用いて北極のグリーンランドのコケから同属菌を分離し、形態観察による種の同定を試みた。また、ノルウェー領スピッツベルゲン島のニーオルスン日本基地北側斜面のコケから2003年から2006年までの毎年夏期に、この培地などを用いて分離されたPythium属菌の計174株について、形態学的および分子生物学的手法による同定を行った。その結果、これらの菌株が5つの種レベルで異なるグループに類別され、それぞれのグループの分離頻度の年次変動が種毎に異なることがわかった。
すべて 2007
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Plant Disease 91
ページ: 1591-1599
Meddelelser on Groenland, Serie: Biocience 56
ページ: 95-98