本研究では、琵琶湖から分離した様々な分類群(緑藻類、珪藻類、ラン藻類)の代表的な植物プランクトンに関して最適NP比と実際に増殖に影響が生じるNP比を培養実験から明らかにすること、培養実験から得られた結果によって琵琶湖における植物プランクトン各種の現存量め変花や種間競争を説明できるかどうか野外調査で検証すること、琵琶湖における長期的な植物プランクトン優占種の変遷とNP濃度とその比の変動との関係について見解を示すこと、の3つを目的としている。 本年度は、植物プランクトン優占種の変遷と、NP濃度とその比の変動との経時的な関係についてのデータ採取のための野外調査を、昨年度に引き続き施設前の桟橋(琵琶湖南湖)を定点として実施した。1週間に1回程度の頻度で採水を行い、検鏡による植物プランクトン計数とクロロフィル濃度の測定、フローサイトメーターによるピコ植物プランクトンと細菌の計数、PAMを用いたクロロフィル励起蛍光法による光合成活性と電子伝達速度の測定、蛍光光度法によるアルカリフォスファターゼ活性の測定、オートアナライザーと分光光度計による全N・P濃度、無機態N・P濃度の測定、炭素窒素分析装置によるセストンC・N濃度の測定を実施した。また、クロロフィル濁度計を投入し連続自動観測を行った。 これまでに得られた3年間の定期観測データからクロロフィル変動と光合成活性の変動の同調性が見えてきており、特に春季(水温上昇期)の珪藻増殖期、夏季のラン藻増殖期、秋季の緑藻増殖期が集中観測を行う時期として適当であることが明らかとなった。平成21年度には、これらの時期を対象として、室内培養実験で得られた栄養十分な時の細胞内CNP比と栄養枯渇時の細胞内CNP比と、野外における優占植物プランクトンの細胞内CNP含量とその比の実測値との関係を明らかにするための集中調査を行う計画である。
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