研究課題/領域番号 |
19510045
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
白川 博章 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (50393038)
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研究分担者 |
金子 慎治 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (00346529)
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キーワード | 補償制度 / 中国 / 環境サービス / 水資源 / 効率性評価 / 包絡分析 / 農業用水 / 水権転換 |
研究概要 |
中国では「生態環境補償」と呼ばれる、環境保全にかかる費用負担メカニズムの確立を目指し、様々な事業を開始した。生態環境補償とは、環境サービスの受益者が環境保護者に対し、環境保全の費用を補償する制度である。本研究の目的は、流域環境の保全に関する生態環境補償を対象とし、水資源利用の効率性の変化と補償制度の費用と便益を検討することである。 平成19年度は、主に、中国における生態環境補償制度と水資源利用効率の現状に焦点を当て、文献調査等を通じて、研究を実施した。その結果、得られた知見を以下に記す。 中国では、1990年代半ば以降、生態環境補償に関する議論が活発になるが、その補償額の算定方法はまだ十分に確立していないことが分かった。例えば、黄河流域で実施されている農業団体から発電所へ取水権を移転する場合、法律上は考慮できる費用として、(1)農業灌漑施設建設費用、(2)農業灌漑施設維持管理費用、(3)農業灌漑施設の更新費用、(4)経済的利益と自然保護費用とすることを定めている。しかし、実際に、黄河流域で行われている水権取引の費用では、灌漑用水路の建設費の一部または全部で、その他の費用は反映されていない。これは、建設費用以外の部分については、合理的な算定方法が未だ確立していないためである。環境サービスの算定方法を確立することが大きな課題であることが分かった。 また、水資源の利用効率性については、黄河流域の農業用水を対象とし、包絡分析(DEA)を用いて地域間比較を行った。その結果、DEAで評価した農業用水効率性値は、青海省、甘粛省、山西省で他地域と比較して高く、逆に内蒙古自治区や寧夏自治区で低い傾向があることが分かった。効率性に影響を与えているのは灌漑施設整備の差が大きく影響していると考えられ、その整備にかかる費用負担メカニズムを改善することで流域全体の水資源利用が効率化し、その結果水資源環境も改善されることが示唆された。
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