研究課題/領域番号 |
19510045
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
白川 博章 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 准教授 (50393038)
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研究分担者 |
金子 慎治 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (00346529)
東 修 名古屋大学, 大学院・環境学研究科, 助教 (70464154)
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キーワード | 補償制度 / 中国 / 環境サービス / 水資源 / 効率性 / 限界価値 / 水権取引 / トランスログ生産関数 |
研究概要 |
中国では「生態環境補償」と呼ばれる、環境保全にかかる費用負担メカニズムの確立を目指し、様々な事業を開始した。生態環境補償とは、環境サービスの受益者が環境保護者に対し、環境保全の費用を補償する制度である。本研究の目的は、流域環境の保全に関する生態環境補償を対象とし、水資源利用の効率性の変化と補償制度の費用と便益を検討することである。 平成20年度は、昨年度に実施した文献調査の結果を踏まえ、水利権の取引制度を対象に、移転にかかる費用と水の限界価値(1単位の水の利用が生み出している価値)との比較を行った。さらに、水資源モデルを構築し、水資源配分の変化が社会経済や環境に与える影響を検討した。その結果、得られた知見を以下に記す。 トランスログ生産関数を用いて、業種別に工業用水の限界価値を計測したところ、水利権の価格(限界費用)が水の限界価値よりも低いことを示した。このことは、農業セクターが十分な補償額を受け取っていないことが示唆された。また、黄河流域の主要都市の一つである西安市を対象として、地下水を含む水資源モデルを構築し、水資源配分の変化による社会経済影響を検討した。その結果、灌漑効率を50%から60%に改善することで、約0.7億トンの水が削減され、地下水位が約1m上昇する可能性があること、水1t当たり節水する費用は約3元でありこれは工業用水価格よりも低いことから、農業から工業へ水利権の取引の可能性があること、などが分かった。
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