研究概要 |
農山村の社会システム・環境性能の低下は,都市と農村の地域経済格差化だけに留まらず,水災害や水質汚染、温暖化緩和機能といった流域全体と連動する環境性能の低下をもたらすと考えられる.本研究では市場原理によって農村資源の持続的管理が難しくなりつつある社会課題に対して政策による解決方法の立案を目的とする.19年度は政策立案のために具備されるべき問題として農業-流域産業の持続的発展および水質環境-経済発展の相互作用およびそれら全体の総合的作用を定量するモデルを作成した.第1段階として,静学ベースで流域内地域間産業連関表と連動する水質汚濁物質CODに関する影響評価モデルを作成した.地域間表ベースで水質汚濁物質の環境負荷原単位を推定した.同時に地域交易分析から水質汚濁物質と経済の流通メカニズムを明らかにした.環境効率改善を行うシナリオ分析から,流域生産額と水質汚濁物質排出量について,経済格差を縮小する持続的な発展を促す市町村間の交易の最適化問題を解き,交易の見直しの意義を明らかにした.農業由来の水質汚濁物質排出量の経済非効率性を示すとともに,改善のために期待される環境保全型農業が波及効果について流域水質改善性能と経済成長の両面から定量的に示した.
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