当該年度における本研究の成果は大きく分類して2点である。第1の成果は、域間廃棄物産業連関表の推計方法を確立し、その問題点を検討した点である。ここでは、特定の地域を対象とせず、より一般的で普遍的な推計方法について検討を行った。その過程において、推計に関する様々な問題点が浮かび上がったが、大きな問題点は2点である。第1は産業廃棄物の処理施設のインベントリ、つまり財・サービス・エネルギー投入量、廃棄物排出量、環境負荷に関連した情報に不明な点が多いために、産廃処理モデルが未整備な点である。この点は調査に困難を伴うため、即座の解決は難しい。第2の点は、地域間(都道府県間)の廃棄物広域移動における財・サービス・エネルギー投入量と環境負荷のモデル化と推計である。この点に対する取り組みが、本研究における第2の成果となっている。本研究では、自動車、船舶をはじめとする複数の輸送手段を想定した廃棄物移動モデルを構築し、船舶の環境負荷が非常に小さいことを実証データを用いた推計結果によって示した。このモデルは、域間廃棄物産業連関表の推計とは独立して適用することも可能であり、モーダルシフトを含めた廃棄物移動に関する政策分析に役立てることができる。 このように研究の途上において浮かび上がった問題点への対応に伴い、2000年度版東京都地域間廃棄物産業連関表の作表を含む地域間廃棄物産業連関表の推計作業は遅れており、2009年度に取り組む課題となるであろう。しかし、問題点への対処を優先した結果、当初の想定よりより信頼性の高い推計が可能になると考えられる。
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