研究概要 |
マテリアルフロ-解析(MFA)は製品ライフサイクルを通じた希少資源の体系的管理を行うための有効な手段である.その場合,スクラップからの目的物質の効率的回収が極めて重要である.スクラップの主たる発生源は土木・建築物,家電機器や自動車など耐久財である.ある時点において発生するスクラップのマテリアル組成は,これら耐久資本財(資本ストック)ののマテリアル組成によって決められている,産業連関表の付帯データとして得られる「設備投資マトリックス」にWIO-MFA手法を用い,従来,経済学者によって金額ベースでのみ推定されていた資本ストックについて,そののマテリアル組成と重量を(金属とプラスチックについて)求めた.その結果,設備投資のマテリアル組成が部門によって大きく異なる事,及び金額あたりの重量も大きく異なる事を見いだした.ちなみに,設備投資の100万円平均重量(金属・プラスチック)は518kgであるが,鉄を主たる組成として持つ水上輸送が最大で1280kgであるのに対し,非鉄金属を主たる組成とする航空輸送は240kg/.これらの情報は金額ベース資本ストックからは得ることが出来ないものである. 耐久財組成を所与としたとき,そこから得られるスクラップの品質は回収・選別技術によって大きく左右される.徹底した選別を行えば純度の高い良質なスクラップを得ることが出来るであろうが,経済性故に実現は困難である.これを技術的に解決する有効な方法が易分解設計(DfD)である. DfDの具体化として,水素吸収合金を用いた自己解体ネジ(ADF, Ishihara-Yamasue(2003))の家電機器への装着が及ぼす環境効果についてWIOモデルを用いた予備的分析を行った.水素吸収合金の生産,解体工程における水素・熱投入を勘案しても,スクラップ品質の向上による負荷軽減効果が生じるとの結果を得た.
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