研究概要 |
1.PALB2・BRCA2二重破壊細胞の樹立 BRCA2の条件破壊細胞を出発材料として、PALB2遺伝子の両alleleを破壊した。この細胞をタモキシフェンで処理し、再クローニングすることによってPALB2・BRCA2の二重破壊細胞を樹立することができた。すなわち両遺伝子が欠損していても、細胞の生存には影響が無かった。 2.PALB2・BRCA2の二重破壊細胞の表現型解析 (1)増殖速度:増殖の速い順に、野生型(倍加時間8時間)>PALB2破壊株(同10.6時間)>BRCA2破壊株(同11.7時間)=PALB2・BRCA2二重破壊株であった。 (2)DNA損傷に対する感受性:PALB2・BRCA2二重破壊細胞はシスプラチンやカンプトテシンに対して、BRCA2破壊細胞と同等の高感受性を示した。 (3)DNA損傷後のRAD51蛋白の細胞内局在:PALB2・BRCA2二重破壊細胞は、BRCA2破壊細胞と同様に電離放射線照射後の核内RAD51タンパク質の集積が、焦点として全く検出できなかった。 (4)以上の結果から、PALB2遺伝子はBRCA2遺伝子の下でBRCA2と同じ経路で働いていると結論づけた。 3.PALB2とFANC-C遺伝子の二重破壊細胞の作製 PALB2遺伝子は、染色体不安定性を示す遺伝疾患であるFanconi貧血の原因遺伝子の一つ、FANC-N遺伝子と同一であった(Nat Genet39,159-161,2007;Nat Genet39,162-164,2007)。そこでFANC因子群を介したDNA修復経路における、PALB2の役割を明らかにするために、FANC-C破壊細胞でPALB2遺伝子の破壊を試みた。現時点では両者の遣伝子二重破壊細胞は樹立できていない。
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