研究概要 |
生産者である緑藻類Chlorella sp.、 Scenedesmus sp.、藍藻類Tolypothrix sp.、消費者である貧毛類Aeolosoma hemprichi、ワムシ類Lecane sp.、Philodina sp.、繊毛虫Cyclidium glaucoma、分解者である細菌4種以上から構成されるモデル実験生態系(マイクロコズム)の成長期に60Coγ線を100、500、1000、5000Gy急照射した。その後、160日間にわたって個体数変動を測定した。その結果、100Gyでは、全ての消費者が対照よりも減少したが、Tolypothrix sp.は増加した。500Gyでは、緑藻類の増殖が阻害され、Lecane sp.は対照よりも減少し、細菌は一時的に減少したが、Tolypothrix sp.は増加した。1000Gyでは、Scenedesmus sp.とA.hemprichihが死滅し、Chlorella sp.の増殖が阻害され、細菌は一時的に減少したが、Tolypothrix sp.、Lecane sp.、C.glaucomaは増加した。5000Gyでは、Scenedesmus sp.と全ての消費者が死滅し、Chlorella sp.と細菌の増殖が阻害されたが、Tolypothrix sp.は増加した。このように、観察された影響は必ずしも線量依存的ではなく、個体数の増加も見られた。従って、これらの影響には、環境影響を評価する際に重要である、生物間相互作用を介した間接影響も含まれていることが示唆された。また、対照と有害因子を負荷したマイクロコズムの間で各構成生物種の個体数の差を求め、その総和をユークリッド距離で表した指数を用いて系全体に対する影響を評価したところ、2000Gyのγ線の影響は、0.57ppmの銅、49ppmの2,4,5-T(除草剤)の影響と同等であることが判明した。
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