研究概要 |
ヌクレオチド除去修復(nucleotide excision repair : NER)機構と塩基除去修復(base excision repair: BER)機構は生体内で生じたDNA損傷を除去する典型的な2つの修復系である。NER機構は紫外線照射やシスプラチンなどの薬剤処理によって生じる大きなDNA損傷を含んだオリゴヌクレオチド単位で除去できる。一方、BER機構は電離放射線照射やアルキル化剤などの薬剤処理により生じる小さなDNA損傷のみをその塩基損傷を含むグリコシド結合を切断することで取り除く。これらの修復機構によりゲノム全体に生じたDNA損傷は修復される。これらの修復系には、2つの経路が存在することが示唆されている。一つは損傷を受けたゲノムDNA全体を修復する経路(Global genome repair;GGR)、もう一つは転写が行われている領域の転写鋳型になっているDNA上の損傷を優先的に修復する経路(trancription-coupled repair;TCR)である。このTCR機構には、RNAポリメラーゼII(polII)により損傷認識機構がなされることで、修復が行なわれていると考えられている。申請者は、転写伸長中のpolIIがメチル化損傷である06メチルグアニンおよび04メチルチミンにおいて停止するかどうか調べた。06メチルグアニンの場合、polIIは停止したが,04メチルチミンでは、polIIは損傷を乗り越えた。またそれぞれの損傷はGC to ATおよびTA to CGトランジション転写変異を起こしていた。06メチルグアニンは転写と共役したDNA修復によって修復される可能性を、またそれぞれの損傷は、転写変異を引き起こす可能性を示唆していた。
|