ヒトにおいてプリン塩基の最終代謝産物である尿酸は、一部に蓄積すると痛風等の原因となるが、一方で強力な抗酸化作用があり、血清中に高濃度含まれる有効な抗酸化剤として機能すると考えられている。しかし実際にどのようなストレスに対して尿酸が効果を示しているか、その反応生成物はどのような生物影響を示すか等不明な点も多い。本研究では尿酸がどのような酸化ストレスに対して防御作用を示すかを調べ、その作用機構を明らかにして、内在性防御物質の存在意義とその利用価値を示すことを目的としている。我々は先にショウジョウバエをタバコ副流煙中に曝露したときに尿酸欠損株の感受性が高いことを示した。そこで野生株において尿酸が実際に抗酸化に寄与しているか調べるために尿酸含量を測定した。その結果、タバコ副流煙曝露によって尿酸含量は増加する傾向が見られた。このような現象は、やはり尿酸欠損株が感受性を示すX線照射を行ったときにも若干の変化であるが観察された。また、副流煙曝露によって尿酸欠損株においては、尿酸の前駆体であるキサンチンが高濃度蓄積されていることがわかった。このことは酸化傷害に対する防御機構として尿酸合成が亢進している可能性を示唆するものである。Invitroの尿酸の反応として、尿酸は活性酸素の仲間である一酸化窒素と反応し、ニトロソ尿酸を生成すること、ニトロソ尿酸は不安定であること、また、グルタチオンと反応してニトロソグルタチオンを生理的条件下で生成することを明らかにしている。従って生体内でも、活性酸素と反応して活性酸素の消去に寄与している可能性が考えられる。
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