研究概要 |
本年度の研究では、貴金属(Au,Pt,Pd)を含む重金属イオンに対する糸状体ラン藻の応答反応と耐性機構について検討した。(1)重金属とラン藻等由来の光合成補助色素PE(Phycoerythrin), PC(Phycocyanin)を反応させ、PEとPCの蛍光強度を測定した。Ag,Cu,Au,Pt,PdはPE,PCと混合すると濃度依存的に蛍光強度の著しい減衰が認められ、水中の低濃度のAg,Cu,Au,Pt,Pdイオンの検出に有用であることが判明した。CdとZnに関しては、蛍光強度は減衰せず、反応性は低いと考えられた。(2)ラン藻細胞を含む培地に重金属イオンを投与すると細胞膜が傷害を受けて、投与した重金属濃度に依存して、細胞からPE,PCが溶出することが認められた。従って本法により水中に存在する低濃度の重金属イオンを簡便にモニタリングすることが可能である。(3)貴金属を含む重金属イオン溶液にOscillatoria brevis細胞を添加すると、貴金属イオンは他の重金属イオン(Cd,Zn,Cu,Ag)に比べてよく吸着されることが判明した。(4)O.brevis由来の重金属輸送体Bxa1のN末に存在するHisリッチドメインは、2つのCys残基の後にHisリッチなモチーフを含み、他の重金属輸送体のそれとは大きく異なっている。本研究ではBxa1のより詳細な解析を行うために酵母と大腸菌の両方でheterologous expressionを行った結果、Bxa1は重金属輸送に関係する重要なタンパク質であることがわかった。しかし、酵母での結果が大腸菌と逆の結果になり、その原因として酵母ではBxa1の細胞内局在が大きく関わっていることが考えられた。また、Bxa1のN末のHisリッチ領域を欠損させることによって、Bxa1は機能を失うことが示され、O.brevisのBxa1のN末に存在するHisリッチドメインが、1価及び2価の重金属に対する耐性に必要不可欠であることを明らかにした。
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