研究概要 |
本研究は、社会的ストレスにより生体機能が変化した場合に、化学的ストレスにさらに生体が暴露された場合の複合影響を、発癌のイニシエーションにフォーカスし、マウスのストレスモデルを用いて検討することを目的としている。化学的ストレスとしてベンゾ(a)ピレンを使用することにした。単独隔離(1匹)の飼育条件によりマウス(BALB/c,5W)にマイルドなストレス負荷をかけ、モデルを作成した。ストレスの負荷期間は2日、7日、30日とした。副腎の肥大が2,7日後で見られ、また、血清中コルチコステロン値および尿中バイオピリン値の上昇が認められ、本モデルにおいてストレスが負荷されていることを確認した。バイオピリンはビリルビンの酸化代謝物であり、ビリルビンはHO-1によりヘム経由で生成するため、ストレス関連酵素として、活性酸素によりその発現が誘導されるHO-1の遺伝子発現解析を肝臓よりRNAを抽出してリアルタイムPCRにより行ったところ、弱いながら誘導されることがわかった。一方、DNAアレイによる遺伝子発現解析の結果、細胞周期に関連するいくつかの遺伝子がストレス負荷により変動していたので、リアルタイムPCRにより検証作業を現在進めている。 DNA付加体のLC/MS/MS測定にあたり、ベンゾ(a)ピレンの投与方法(投与経路、回数など)、投与量、投与後の解剖までの時間、肝臓および肺からのDNA抽出方法等について予備的検討を行なったところ、ほぼ至適条件がわかり、これからストレス負荷したマウスにベンゾ(a)ピレンを投与して、DNA付加体の生成へのストレスの影響を検討し、その時の細胞周期、代謝酵素、アポトーシス関連等の遺伝子の発現に関してリアルタイムPCRにより検討していく予定である。
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