研究概要 |
19年度には、実験室内においてPAHs光化学反応のモデル実験としてPyreneに対する紫外線照射実験、及び干潟環境中におけるPAHs誘導体の分布調査を行った。(1)紫外線照射試験:紫外線照射によりPyreneのハロゲン化体及び水酸化体が生成し、かつ生成量が照射時間に依存していることが明らかとなった。また、干潟環境を模した基質であるガラスビーズをコントロールとし、重金属触媒として二酸化マンガンを用いた条件におけるPAHs誘導体の生成を行い、光化学反応における二酸化マンガンの触媒としての作用についての検証を行った。その結果、マンガン存在下及びコントロールにおける光化学反応物の生成量には変化が見られず、二酸化マンガンの光触媒としての作用を報告している既往の報告(Davide、et. al.2004,Chemosphere,55 941-949.,Rudder、 et. al.,2004,Water Research,38,184-192.)と異なる結果となった。原因として、酸化触媒作用を持つ二酸化マンガンによるPyreneの分解反応が示唆された。さらに、今回はモノ置換体についてのみ注目して測定を行ったが、二酸化マンガン添加区では今回測定対象物質としなかった二水酸化体への反応が進んでいる可能性がある。これらの可能性に加え、干潟におけるPAHs光化学反応においては二酸化マンガンが触媒として作用しない可能性も推測されるために、引き続きPAHsの光化学反応プロセスを解明する必要がある。(2)干潟底質中に存在するPAHs誘導体の実態調査:熊本県有明海における荒尾前浜干潟及び緑川河口干潟から底質を採取し、GC/MSによるPAHs誘導体の測定を試みた。しかしながら現在の前処理法では光化学反応生成物の良好な回収率を得ることができないため、環境中からPAHs誘導体を検出することはできなかった。
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