研究概要 |
08年度には、前年度解明に至らなかった二酸化マンガン(MnO_2)の触媒作用の評価及び、干潟環境中におけるPAHs誘導体の存在の調査を行った。 照射実験として、二酸化マンガンの濃度が2,000ppmになるように調整したガラスビーズに人工海水、PAHsを添加し紫外線を180分まで照射した。今回照射実験にはNaphtalene,Phenanthrene, Pyrene, Benz[a]pyreneの4種類のPAHsを使用した。照射後のサンプルはGC/MSを用いて光化学生成物を定性し、紫外線照射時間に伴う生成物の経時変化を測定した。 照射の結果、NaphthaleneとPhenanthreneにっいては光化学反応生成物が検出されなかった。一方でPyrene, Benz[a]pyreneに関してはそれぞれの塩素化、臭素化誘導体が検出された。誘導体生成は紫外線照射開始後150分後から急激に増加し、180分後にはMnO_2を添加しないコントロール区の生成量を大きく凌駕した。Pyrene, Benz[a]pyreneはHOMO-LOMO間のエネルギー差が小さく、励起状態に移行しやすいために光化学反応生成物を生じたと考えらる。 PAHs誘導体の実地調査は、熊本県荒尾前浜干潟において2008年7-8月の晴天時に行った。採取した底質サンプルは事前に開発した前処理法に従って処理し、GC/MSにて測定した。その結果、室内実験において生成が確認された1-Chloropyrene, di-chloropyrene, 1-bromopyreneが検出された。本研究によって大気中だけではなく、土壌や底質においてもPAHsが共存する金属酸化物や太陽光によって誘導体へ変化する可能性が示唆された。
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