研究概要 |
3-ニトロベンゾアントロンの究極活性体である0-アセチルー3-ヒドロキシアミノベンゾアントロンと核酸の一つであるデオキシアデノシンー5-リン酸との反応を昨年度に引き続き解析を行った。核酸付加体に相当する,HPLCピークの分取を繰り返し,NMRによる解析を行った。その結果デオキシアデノシンのアミノ基にアントロン骨格の2位が結合した通常のDNA付加体の他に,リン酸部位にベンゾアントロンが結合したリン酸付加体の生成が明らかとなった。構造はリン酸部位の酸素とアントロンの2位が結合したものであり,同様の付加体はチミンやシチジンの5`-リン酸体との反応でも得られる事がわかった。いずれも収率は約0.2%であった。これらの付加体の別途合成法の検討を更に行った。リン酸位にカップリングさせる方法は,DCCを用いる方法,アミダイトを用いる方法等が考えられるが,これらの方法は,目的とするリン酸付加体の合成には不向きである事がわかった。いずれの場合も目的生成物の合成は出来なかった。得られるリン酸付加体は酵素的な安定性にっいても検討した。フォスフォジエステラーゼや,アルカリフォスプァテースなどのいずれの酵素にも耐性があり,リン酸とベンゾアントロン部位または核酸部位の結合の酵素的加水分解はほとんど進行しなかった。そのためこの付加体は,細胞内で生成すると,酵素的には不活性であり,耐性があるものと推定された。今後,DNAとの反応で,リン酸付加体の生成の確認や細胞内での存在を詳細に検討する必要がある。
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