サリドマイドによるヒトの四肢低形成奇形については、血管形成阻害、酸化的DNA傷害、代謝物の関与等の種々の仮説が提案されているが、未だ明らかでない。そこで、本研究は初期の血管形成前の肢芽(手足の原基)に対する影響をin vitroで見る系として、肢芽の間葉組織に近似したヒトの間葉系幹細胞を用いて検討した。10μMのサリドマイドを培地に添加し、24時間後までの遺伝子発現の変化をマイクロアレイで解析した結果、酸化的ストレスを含め、明瞭な変化は認められなかった。一方、比較のため、マウス間葉系細胞を用いた実験でサリドマイドを10-300μMで添加し、24時間後の遺伝子発現を同様にマイクロアレイで解析したところ、癌転移に関係することが示唆されているlong non-coding RNAの一つが用量依存的に減少することが明らかとなった。
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