研究概要 |
ダイオキシンなどの有害化学物質が、神経系の発達に与える影響はほとんど明らかになっていない。これらの化学物質はアリルハイドロカーボン受容体(AhR)の結合と活性化を介して様々な遺伝子の転写に影響を与える。本研究では、ドーパミン生合成の律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)遺伝子が、AhRを介してダイオキシン類によって異常な転写誘導されることに注目し、THプロモーターの活性化を指標として、ドーパミン神経機能の発達における活性化AhRの役割を解明する。平成20年度は、前年に構築したTHレポーターコンストラクトを導入したトランスジェニックマウス(TH-Tgマウス)とTH-Tgマウスの胎児から単離した神経幹細胞を用いて、胎生有害環境下におけるTH遺伝子の活性化を検討した。 TH-TgマウスのE14.5日胚の脳から、神経幹細胞(NSC)を分離し、largeT抗原を組み込むことで不死化した。不死化したNSC(imNSC)は、N2 medium-10ng/ml GDNF- 200μM ascorbic acid条件下において、TH陽性神経へ確率的に分化が見られる。同条件下において、7日間の2,3,7,8-TCDD曝露を行ったところ、TH陽性神経への分化率の上昇が認められた。 これらの結果から、胎生期におけるダイオキシン曝露などの有害環境は、TH遺伝子の転写活性化を介して、ドーパミン神経細胞への分化誘導機構をかく乱し、中脳発達に影響を与えることを示した。
|