ポリ塩化ビニル(PVC)を含むポリオレフィン系廃プラスチックの接触分解による石油化学原料化ケミカルリサイクル技術を確立するためには、塩素存在下でも機能するプラスチック分解触媒の開発が必要となる。本研究では、ポリオレフィンの芳香族炭化水素(主成分はBTX)への分解に有効な触媒であるガリウムシリケート(Ga-Si)をベースとした耐塩素性分解触媒の調製とその作用機構の解明について検討した。525℃でのGa-Si触媒によるポリエチレン(PE)の分解におけるBTX収率は53〜55%であったが、1wt%のPVCを含むPEの分解ではBTXの収率が約40%に低下した。これに対して、Al添加したガロアルミノシリケート(Ga-Al-Si)触媒は耐塩素性を示し、PVC存在下でも約50%の高いBTX収率が得られた。触媒活性はAl添加方法に大きく依存し、Al_2O_3を含浸担持した場合は効果がなく、Alを水熱合成でシリケート骨格に導入すると耐塩素性が発現することがわかった。さらに、触媒の酸性質をモデル反応法およびアンモニアの昇温脱離法で検討したところ、PVCから発生する塩化水素は触媒の酸性質を低下させることが明らかになり、このことがポリオレフィンの分解における触媒活性の低下の一因であった。シリケート骨格内のAlに起因して形成される酸点は塩化水素の影響を受けにくいため、Ga-Al-Siは耐塩素性に優れているものと推測した。プラスチックリサイクル技術の多くは耐塩素性に乏しく、PVCの高度選別除去を必要とする。しかし、完全に除去することは非常に難しいことから、微量PVCの混入を許容するケミカルリサイクルプロセスの構築が可能になってきたことの意義は大きいと云える。
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