研究概要 |
平成21年度は,沿岸域レクリエーションエリアのモニタリング調査を継続するとともに,先端的な分子生物学的解析手法であるパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法を水環境に適用させ,ふん便細菌の汚染源追跡手法としての有用性を検討した。最終年度(平成22年度)の汚染源追跡の前段階的研究として,沿岸水から単離・同定したふん便指標細菌である腸球菌種について,PFGE法による遺伝子型の解析について試みた。 (1) 2009年モニタリング結果 宮崎県宮崎市内のレクリエーションエリアを対象に,ふん便汚染指標菌であるふん便性大腸菌群(FC)と腸球菌(ENT)のモニタリング調査を実施した。調査期間中のFCおよびENTの細菌数は,それぞれ0~6.3×10^3 CFU/100mLおよび0~5.2×10^3CFU/100mLの範囲で検出された。サーフィンエリアにおいて高い細菌数を示す地点があったが,海水浴場の細菌数はいずれの地点においても低かった。両ふん便性細菌も塩分濃度と有意な負の相関を示し,前日降水量とは高い正の相関を示した。降雨による影響が非常に高いことから,これらの情報をレクリエーションエリアの環境衛生に利用することが期待できる。 (2) PFGE法による遺伝子型の解析 沿岸水試料から単離した腸球菌のうち,Enterococcus faeciumの方がEnterococcus faecalisよりも高頻度で同定された。そこで,E. faeciumを指標細菌として,沿岸域から単離した菌株にっいて,PFGEによって解析した。その結果,全40株のE. faeciumは9種類の泳動型を示し,試料ごとに異なる泳動型であった。PFGE法による遺伝子型の解析によって,各試料のE. faeciumの特徴付けができた。この特徴を解析することによって,腸球菌を用いて汚染源追跡が可能であることがわかった。
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