研究概要 |
沿岸域における汚染状況を把握するため,ふん便性細菌の実態調査を実施し,さらに,沿岸レクリエーション用水域におけるふん便性細菌の汚染源追跡手法として,パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法を水環境に適用させ,本手法の有用性を検討した。 海水浴場やサーフィンエリアを含む宮崎市沿岸域における,ふん便性細菌(ふん便性大腸菌群,ふん便性連鎖球菌,あるいは腸球菌)の実態調査を行った結果,各調査地点においてふん便性細菌が高濃度で検出される場合があった。細菌数は調査地点あるいは季節によって大きく変動し(0~10^5CFU/100mL,降雨の影響などを受け上昇することがわかった。また,腸球菌種の同定試験において,主に人畜に由来する腸球菌種が検出されたことから,沿岸レクリエーション用水域は,人畜を起源とするふん便性細菌による汚染を受けていることが示唆した。ふん便汚染の指標細菌である腸球菌種の同定・回収方法から,PFGE法を用いた遺伝子型の解析までの一連の汚染源追跡アプローチ法を確立することができた。本アプローチ法を用いて,宮崎県宮崎市青島海水浴場および大分県別府市スパビーチをレクリエーション用水域のモデルエリアとして設定し,各海水浴場の汚染源となる河川の特定について試みた。青島海水浴場における実証調査では,大淀川から単離したEnterococcus faecium(腸球菌の1種,指標細菌)と青島海水浴場から単離したE. faeciumのそれぞれのPFGE型(DNAフィンガープリント)が,非常に高い類似性を示した。したがって,青島海水浴場には,大淀川を起源とするふん便性細菌が流入していることを推察した。スパビーチにおいて同様に行った実証調査では,境川が汚染源である可能性が高いことがわかった。
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