持続可能な循環型社会を構築するため、再生可能な資源であるバイオマスを有用かつ高付加価値の化学品に直接転化する反応技術の開発を目的とする研究を行った。研究項目として、1)バイオマスから含酸素低分子化合物への転化反応の研究、2)含酸素低分子化合物の芳香族・オレフィン化の研究、3)ゼオライトを用いる気相反応装置の検討を行った。1)バイオマスから含酸素低分子化合物への転化反応の研究では、グルコースなどの単糖類の他、サトウキビの搾りかすであるバガスや、廃糖蜜を原料として、酸触媒を転化した水熱反応によって高収率にレブリン酸に転化できることを示した。また反応温度を180℃程度で行うことで炭素質物質の副生を低減できることなどを明らかにした。さらに、酸発酵により、グルコースをから酢酸、乳酸、酪酸などの有機酸に80%近い高い炭素収率で転化できることを示した。2)含酸素低分子化合物の芳香族・オレフィン化の研究では、レブリン酸からアセトン、エチルメチルケトン、酢酸を経て芳香族とオレフィンに転化できる反応系とその触媒を明らかにした。同様に、酢酸、乳酸、酪酸からも芳香族とオレフィンを製造できることを示した。3)ゼオライトを用いる気相反応装置の検討では、酸点分布を制御したゼオライトの合成に成功し、その形状選択性を活用して、プロダクト中の有用成分の選択性を向上させた。また、流動層やドラフトチューブ噴流層反応装置に使用するゼオライト触媒の流動性が、粒子表面粗さを適切に制御することで向上することを明らかにした。
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