研究課題
鉄・マンガン酸化細菌群集が形成する鉄・マンガン酸化物は、重金属やヒ素など有害微量元素の優れた吸着担体として機能するため、有害微量元素で汚染された地下水浄化への適用が期待される。本研究では、鉄・マンガン酸化集積培養系を構築し、地下水浄化システムのラボスケールモデルを構築することを目的としている。本年度は、鉄・マンガン酸化細菌群集の集積化とその群集構造の解析を検討し、以下の成果を得た。1.以前の研究で調製したマンガン酸化集積培養系を中性pH、好気条件下でMn(II)(〜5mg/L)を添加しながら継代維持した。この培養系の一部を別の培養器に移し、Mn(II)(〜5mg/L)とFe(II)(〜5mg/L)を同時に添加しながら、新たに鉄・マンガン酸化物の形成を伴う集積培養系を作製した。2.鉄・マンガン酸化細菌群集の集積において、培養時間の経過とともに培養液のマンガン酸化活性は徐々に上昇した。一方、鉄に関しては試験初期より急速に酸化沈積したことから、溶存酸素による化学酸化の寄与が大きいと推察された。3.マンガン酸化細菌群集より16S rRNA遺伝子をPCR増幅してクローンライブラリーを作製し、群集構造の解析を行った。その結果、系統的に多様なα-Proteobacteria Bacteroidetesが主要なクローンとして検出された。さらに、希釈平板法によりMn(II)酸化細菌を分離したところ、試験した9菌株全てがα-Proteobacteriaに属し、5菌株(Rhodobacteraceae)は集積系より得られた1クローンと近縁であることがわかった。以上より、Mn(II)酸化集積培養系には多様なα-Proteobacteriaが主要な細菌群として存在し、それらの少なくとも一部はMn酸化物の形成に直接的に関わっていることが示唆された。
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