代表者はこれまで、ガラスビーズを充填した模擬土壌カラムにある種の界面活性剤水溶液を充填すると、トリクロロエチレン(TCE)のような有機塩素系溶剤の原液状態でのカラム内での下方浸透挙動が大きく変化することを明らかにしてきた。本課題では、この下方浸透性を支配する因子を抽出することを目的としている。 今年度は19年度の結果を踏まえて、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、セチルトリメチルアンモニウム臭化物塩(CTMA)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(B35)の3種の界面活性剤が共存する場合のTCE原液のガラスビーズ充填カラム中での挙動を測定した。臨界ミセル濃度程度までのLASが共存した場合、TCE原液は粒径0.2mm程度のカラムを素早く浸透するが、臨界ミセル濃度を大きく超えると0.4mm径以上の空隙を必要とし、浸透速度も小さい。CTMAではCTMA濃度が上昇するとTCE原液は浸透しやすくなるが、0.4mmビーズにより作られる空隙を必要とした。B35の場合には1mm径までのビーズカラムではB35濃度によらずTCE原液の下方浸透は起こらなかった。ビーズ径が2mm、3mm、4mmと大きくなるとTCEの下方浸透性は上昇し、さらにB35濃度が高いほど浸透は起こりやすいことが分かった。 これらの結果は、空隙を通過する際の抵抗の大きさにより支配されると考えられることから、ガラスビーズ表面への界面活性剤分子の吸着量を測定して説明をを試みる予定である。
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